捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
「光汰って高校時代から、ちょっとお調子者かなってところはあったけど、根っこは純粋だった。そういうところに惹かれたの。でも今は違うね」
「はあ?」
「バカみたいに純粋すぎて、気づけばこうなっちゃったんだろうけど」

 光汰を甘やかしてきたのは私もだ。
 もちろん、私ばかりが原因とは思っていないけれど……。

「その一因が私だって考えたら、自分にも腹が立つ。お願いだから、これ以上私たちの過去を汚点にしないでよ」

 私がきつい言葉を放った直後、光汰は歯を食いしばって私の肩に掴みかかってきた。

 痛みに顔を歪ませたとき、仲間のひとりがニヤニヤして口を挟む。

「ねー。あんた、今の状況わかって言ってるの? 強がっちゃってさあ。友達も巻き添え食っちゃうんだぜ?」
「敦っ……」

 その男が敦子の顔に手を伸ばした刹那――。

「痛ってえ!」

 次に声を上げたのは敦子を押さえつけていた男。路地からやってきた誰かが瞬く間にふたりの男を退けた。

 私はその人を見て驚愕する。

「お前は……この前も邪魔してきたやつ!」

 光汰は舌打ち交じりに言って、私を力任せにグイと引き寄せた。

「今日も邪魔しに来たのかよ。でもあいにく今日は俺ひとりじゃねえんだよな」

 光汰の言葉を合図に、ほかの三人が息巻いて〝あの男性〟を囲む。

 ――そう。やってきたのはこの間も私を助けてくれたスーツの彼だ。

 そこにいるだけで華やかな印象を与える魅力的な彼が、眉ひとつ動かさずに淡々と答える。

「見ればわかるよ。なら、手加減しなくても文句はないよな?」
「はっ。できるもんならやってみろよ」

 多勢に無勢で不利だ。
 それにもかかわらず、彼なら大丈夫な気がするとどこかで思ってしまうから不思議だ。

 とはいえ、現実にはかなり危険な状況に違いない。私のせいで怪我でもしたら大変。

 せめて私にもできることをしなければ。

 私は光汰の腕の中からふいうちで、思い切り腕をつねってやった。光汰が声を上げ、痛がっている隙をついて逃げる。
 だけど、怒った光汰の手が再び私に伸びてきた。

「こいつっ……うわあっ!!」
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