捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
「いただきます。……あ、美味しい」
「年代物のわりに、癖があまりないだろう? 気に入ったならよかった」

 元々お酒が大好きなわけではないので、ワインの中でも特に赤は、芳醇ゆえに少し苦手に感じられる種類も少なくない。
 だけど、このワインはそんな私でも美味しく飲めた。

 ふたくちめを口に含み、ゆっくりと味わったあと、当たり障りのない会話を投げかける。

「お仕事は順調ですか?」

 ソファで横並びだからか、食事中なんか比じゃないほどドキドキしてる。
 なんとか気を紛らわせたい一心だ。

 私とは打って変わって、リラックスしている佐渡谷さんは優雅にワイングラスを回しながら口を開く。

「そうだな。父が少々せっかちな性質でね。毎日気が休まらないけど、今日は休日を満喫してる」
「それはよかっ……ん」

 テーブルにグラスを置いて彼を振り向いた瞬間、口づけられる。
 お互いに冷えたワインを飲んだ直後だからか、ヒヤッとした感触がした。

 重ねられていた唇が離れていき、ぽつりと囁かれる。

「真希」

 途端に心臓を鷲掴みされる感覚に襲われた。

 動転、喜び、困惑、ときめき。いろいろな感情がいっぺんに押し寄せる。

 誘われるように視線を上げる。
 彼の熱のこもった双眼に触発され、たちまち身体が熱くなる。

「真希、好きだ」

 揺らぎのないまっすぐな瞳。

 しかも、その甘い声で言われたら……。

「ん、あっ……ふ」

 再び交わしたキスは、すぐに奥まで蹂躙されて思考をとろとろに溶かされる。
 気づけば私はソファに横たわっていて、佐渡谷さんと指を絡ませていた。

「は、あっ……んう」

 いっそう深くなっていくキスに、息継ぎするのがギリギリ。
 それでもやめてほしいとは思わなった。

 むしろ、夢中で彼の吐息を貪って……。

「その可愛い声、もっと聞きたい。いい?」
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