捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
「今日は随分、積極的だな」
「……幻滅しますか?」
「いいや。そういうのもまたそそられる。でも、俺もされるがままじゃいられなくなると思うよ?」
「え、ひゃっ……」

 拓馬さんは口元を緩ませて私を押し倒す。そして、荒々しく自分のシャツを脱ぎ捨てた。

「もう止められないから」

 ぼそっと耳孔に直接囁かれ、そのあとは私なんて手も足も出ないほど頭も身体もとろとろに溶かされる。
 私はすぐになにも考えられなくなっていった。

 度々、彼が蜜を含む声で「真希」と繰り返し呼びながら執拗に攻め立てられているうち、私は果ててしまった。

 同じく拓馬さんも私に覆いかぶさって乱れた呼吸を整えていた。

 拓馬さんの重みに幸福感を抱いていると、ふいに彼が起き上がる。

「真希。まだ足りない」
「えっ……」
「もっと欲しい」
「ん……っ、あっ」

 ゆっくり休む時間も与えられず求められ、動揺するのも束の間、私は彼の指先に反応する。

 恥ずかしい。だけど、これでいい。
 身体を重ねているうちは、余計な思考は消えていくから。

 理性を手放す直前、不安な感情が出てしまいそうで咄嗟に自分の顔を手で隠した。
 今、この瞬間に集中しようとしていたとき、手を掴まれ顔から外される。

「そうやって恥じらわれると余計に暴きたくなる」
「え、違っ……う、んんっ」

 完全に野獣と化した拓馬さんに牙を剥かれ、たちまち快感の渦に呑み込まれた。

「真希……もっと乱れて」

 キスの雨が降り注ぎ、私の奥を暴く彼の興奮が伝染して、僅かに残った理性すら飛んでしまう。

 なによりも、いつも冷静な拓馬さんがここまで余裕をなくして私の名だけを口にする姿が、私の心を熱くさせる。

「拓馬……さっ……も、だめ……あぁっ」

 互いに我を忘れ、何度も何度も求め合う夜はとても長く、儚かった。

 最後には気を失った私が目を覚ましたのは、翌朝のことだった。
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