ロミオは、ふたりいない。
3階まで階段を上ったら
静かだった
さっきいた場所と
別世界
ユートはずっと黙ってて
私もその後ろから黙って歩いた
「ここ、誰もいなくて、静かだね!
ユートも疲れた?
フリースロー頑張ったもんね!」
ユート…?
「ジュリ…
オレのこと、ちゃんと好き?」
急にユートが言った
真剣な顔だった
昨日も聞かれた
なんで
そんなこと
聞くの?
「うん、好きだよ
ユートのこと、好きだよ」
「…リョータより?」
「なんで…?…成瀬、関係ないよ」
「リョータの気持ち、知ってる?」
「成瀬の…?」
「うん…
アイツ、ジュリが好きだよ」
え…
びっくりして
ユートの顔を見た
ユートは私と目を合わせないようにしてた
「オレ、それ知っててジュリに
告白したんだ
…
好きな子の好きなヤツぐらい
わかるけど…
…
1番の親友の
好きな子もわかるよ…
…
ヒドイよね…オレ…
…
ジュリとリョータが両思いなの知ってて
ジュリに告白した」
「でも、あの時、成瀬
先輩と付き合ってたよ」
「付き合ってても好きじゃなかったって
リョータ、言ってたでしょ」
「うん…」
「リョータが先輩と付き合った理由知ってる?
…
好きな子を守りたかったから
…
リョータの好きな子が
自分のせいで嫌がらせされてて…
…
自分が誰かと付き合えば
女子たちの目がそっちにいくって
…
だから付き合う相手は誰でもよかった
好きじゃなくても…」
「え…」
「先輩と別れた理由も
嫌がらせしてたのが先輩だったって
知ったから…
…
だから、別れた
…
…
リョータが好きなのは…
ジュリだったんだよ
…
先輩と付き合ってても
ジュリが好きだったんだよ…」
成瀬のこと
ひどいって
思ったのに
成瀬が先輩と付き合った理由
成瀬が先輩と別れた理由
全部、私だった…
なのに私…
「最低…私…
…
成瀬に、ひどいこと言った」
「ジュリは悪くないよ
…
オレ、ジュリのこと、好きだよ
…
…
ジュリは
全部知っても…
…
オレのこと、好きって言える?」
ドキドキ…ドキドキ…
「うん…好きだよ…」
「一瞬でも気持ち、揺るがなかった?」
「うん…好きだよ…」
「ジュリ…
…
オレのこと、ちゃんと見てる?」
「見てるよ…」
ドキドキ…ドキドキ…
「ちゃんと、こっち見て…」
「見てるよ…ユート…」
ドキドキ…ドキドキ…
見てるけど
ユートが
どんどん
滲んだ
「ちゃんと、ドキドキしてる?」
「してるよ…
…
ちゃんと、ドキドキしてるよ
…
ユート…」
私は
ユートが…
「ごめん…
オレ、もぉ進めない…
…
ジュリのこと好きでも…
…
好きで仕方なくても…
手を繋ぐのが精一杯だった
…
リョータの気持ち知ってたから
いつも罪悪感があって…
…
…
ジュリに触れるのが
こわかった」
ドキドキ…
ドキドキ…
「ユート…
…
ユートは、私のこと…好き?
今も、好き?」
ドキドキ…ドキドキ…
「うん…
…
好きだよ…
…
大好きだよ…」
ドキドキ…ドキドキ…
「私もユートのこと…」