ロミオは、ふたりいない。

「いたいた…木々羅さん
実行委員なのにサボり?」



成瀬の声



なんで…

ユートじゃないの



泣いてる顔を見られたくなくて

下を向いた



「ユートが木々羅さん
ここにいるって言うからさ…

オレ、聞いてもないのに…」



「ごめん…
すぐ教室行くね…
もう少ししたら行くから
成瀬、先に行っててよ…」



成瀬が私の顔をのぞき込んだ



「行けんの?その顔で…

目、腫れてて、鼻、赤いけど…
うちのクラスって
お化け屋敷やったっけ?」



「だよね…
やっぱり、ブスだよ、私」



「だね…

けど、抱きしめたくなる…

ユートもたぶん
同じ気持ちだと思うよ

ずっと
抱きしめたかったと
思うよ」



ユート…



ユートが笑ってる顔



好きだよ…って言ってくれる

優しい顔



最後に見た

真剣な顔



思い浮かべたら

また涙が出た



「あーぁ…
オレが泣かした?

見せたくないな
その顔…

ユートには…」



そう言って成瀬は

そっと私の頭を撫でた



抱きしめてくれる人なんて

誰も

いない



最低なのは

私だから




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