ロミオは、ふたりいない。

屋上を出たところで

成瀬が待ってた



風が強かった

成瀬の髪がサラサラなびいてた



「雨、降りそう…」



成瀬が手のひらを空に向けた



「…なに?成瀬…」



私の話を

聞いてくれようとしてるの?



「うん、ごめんね
呼び出したりして…

雨が降る前に言うか…」



成瀬が深呼吸した



「木々羅さん…

木々羅…
オレ、木々羅のことが好きなんだ

ユートと別れたからとかじゃなくて…

ずっとユートが羨ましかった

オレも好きなのに…って
ずっと見てた

ユートの彼女なのに
ずっと欲しかった

まだ気持ちの整理つかないかもしれないけど
オレの気持ち伝えたかった


絶対、守るよ、オレ
木々羅のこと

大切にする



だから
オレと付き合って…」



パタパタパタ…

耳元でセーラー襟がなびく音がする



ドキドキドキドキ…

私の胸の音




「成瀬…
ありがとう

ユートから全部聞いたよ

ずっと私のこと守ってくれてたんだね

なのに私
ヒドイこと言って、ごめんね

1番最低なのは、私なんだよ

成瀬を傷付けて
ユートにも嫌な思いさせてた

自惚れてた、私


誰かに好きになってもらう資格なんて
ないんだよ

でもね
誰かに恋をするって
なんか、幸せになるね…


それを教えてくれたのは
成瀬だった

成瀬見てると…
成瀬といると…
ドキドキした

これが恋なんだな…って

いつも誰かに恋してる成瀬って
いつもあんな気持ちなんだね…

片思いでも両思いでも
恋って楽しくて、辛いんだね

でもね
なんか、いいよね…
上手く言えないけど…


ありがとう
成瀬

ドキドキさせてくれて…

私のこと
好きになってくれて…」



「うん…」



風になびく髪を押さえた



「成瀬…

私…」



「待って…
まだ言わないで

やっぱ
心の準備できてない

明日、返事ちょうだい
もぉ決まってるでしょ
木々羅の気持ち」



私の気持ち…



「うん…」



「今日寝たら
かわるかも知れないから…

だから…
だから、明日の昼休み…

やっぱ、放課後!

またここで返事ちょうだい」



「うん…わかった」





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