ロミオは、ふたりいない。

「廣永!」



「木々羅…
どーしたの?」



「お弁当食べてたら
窓から、廣永が見えたから…
…見つけたから…」



見つけただけでも

嬉しいのに…



あのね…

見つけたから…



「寒いね…」



廣永が身体を屈めて言った



「うん…
あの時と、違う場所みたい…」



「あの時…?」



暑かった



夏の風が吹いてて

ここだけ日陰になってて



廣永、いい場所知ってるね…

って



廣永の表情

廣永の声



夏の音

ホイッスルの音

私の胸の音



それから

あの時の熱くなった気持ち



全部

覚えてる



「うん…
廣永、忘れた?」



「…んーん…覚えてるよ…」



あの時と変わらない

廣永の優しい声



ドキ…

ドキ…

ドキ…



あのね…

廣永



< 267 / 420 >

この作品をシェア

pagetop