夏を殺して。
夏を殺して。
夏は残酷だと思う。
「ねえ、吉田」
たくさんの生き物が生きているのに、たくさんの生き物が死ぬ。
相反する二つが隣合っている。夏は残酷だ。
そんなことを思うのは、今朝見たあのグロテスクなセミの死骸のせい。
きっと、そうに違いない。
通学路はいつも通りだった。
いつも通りセミがうるさくて、そして、いつも通り何匹かのセミが死んでいた。
ひっくりがえって、死んでいた。
その中の一匹。
腹の上を自転車なのか、人なのか分からないけれどぐしゃりと潰されたあいつが死んでいた。
だからわたしは、かわいそうって上から口にした。
「俺、彼女できた」
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