■王とメイドの切ない恋物語■
会場から拍手が起こる。

どうやら、トーマ様と、エリザベス姫が、1曲踊り終えたみたいだ。

私も拍手した。

トーマ様の踊ってる姿なんて、滅多に見られないじゃない。

うん、そうよ。

しっかり目に焼き付けておこうっと。

私は、なるべくエリザベス姫を見ないようにしながら、2曲目を踊っているトーマ様を見つめた。



踊りのことはよくわからないが、素人の私が見ても、トーマ様の踊りは上手だった。



トーマ様、素敵…

トーマ様をチラチラ見ながらも、私は、きちんと仕事をこなしていった。


二時間にもおよぶ舞踏会は、いよいよ終盤を迎えた。

その間、エリザベス姫は、踊っていないとき、ずっとトーマ様のそばで、うっとりとした表情をし、話し掛けていた。

二人の近くを通った時、



「今晩、わたくしの部屋に来ませんか?」



そうエリザベス姫が、トーマ様を誘っているのが、聞こえた。

私は、聞かなかったことにし、仕事に没頭した。




気にしないようにはしていたが、やはり、正直辛かった。

パーティーが終わった時は、心からほっとした。

一刻も早く、ここから離れたかった。

トーマ様と、エリザベス姫が、仲良くしている所を見るのは、もう限界だった。

片付けは、他のメイドの子達が担当なので、私は早々と会場を後にした。

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