■王とメイドの切ない恋物語■
トーマ様の部屋の前に着いた。

急に緊張してくる。

トーマ様、いるかな。

コンコン


ノックの音が廊下に響いた。

「はい」

トーマ様だ!

「リリアです。今、少し時間いいですか?」

ドアの向こうから、愛しい人の声が聞こえる。

「どうぞ、はいって」




私はドキドキしながら、扉を開けた。

「失礼します」


顔を上げるとトーマ様は、乗馬の格好のまま、ソファーに腰掛けていた。


ひょっとして、帰ってきたばかり?


「トーマ様、もしかして乗馬から帰ってきたばかりですか?」

「あぁ、そうだが」

トーマ様は、優しく私を見つめてきた。



「申し訳ございません。お疲れのところをお邪魔してしまって。また、出なおしてきます」

私は頭を下げ、扉に向かった。


あー、私、タイミング悪すぎだよ。

トーマ様、疲れているだろうし、着替えたいだろうし。

乗馬してるの知ってたのに、舞い上がっちゃって、すっかり忘れてたよ

自己嫌悪に陥りながら、ドアノブに手をかけると


背後から

「リリア、5分だけ外にいてくれるか?」

トーマ様の声が聞こえる。

「はい」

私は返事をして、廊下に出た。


5分?何をするのかな?

私は扉の横で、色々考えながら待った。




カチャッ



扉が開いた。

そこには着替え終わって、トーマ様が笑顔で立っていた。


< 126 / 396 >

この作品をシェア

pagetop