■王とメイドの切ない恋物語■
「ねぇ」

その男は、また私に呼び掛けた。



お客様なので、嫌々ながらも返事をした。

「はい」


男は近寄ってきて、私の髪をなでる。

げっ

「ねえ、君、ここでメイドしてるの?」

ここでメイドしてなかったら、こんな格好で、飲み物配ったりしてないよー。

私は、少しうつむいて

「はい」

と答えた。




男は、そんな私のあごを、くいっと持ち上げ顔を近付けてきた。

さ 酒くさい…

「君、可愛いね。何ていう名前なの?うちのお城で働かない?」

心底、嫌な気持ちになった。

絶対イヤだよ。

トーマ様と離れたくないし、何より、こんな人の下で働きたくないよ。

私は、一歩後退る。

「あはは 逃げるの~?」

ダメだ、この人、完全に酔っ払ってるよ。

怖い。




ふと、少し先にマーヤさんを見つけた。

助けてもらおう。

私が、マーヤさんを呼ぼうとした時、



「おい!」

誰かが、酔っぱらいの腕をひいた。
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