■王とメイドの切ない恋物語■
トーマ様、何の用だったんだろう?

私は、トーマ様の部屋の前で、息を整えた。

深呼吸してノックした。


「どうぞ」


私はドキドキしながら、扉を開いた。

「失礼します」

「リリア、早かったな」

トーマ様が微笑みながら出迎えてくれた。

「いえ」

私も、笑みがこぼれた。



トーマ様はソファーに座って、分厚い本を読んでいた。

何の本だろう?

私が本を見つめていると

「あぁ、これか?この本は、イギリスの農家の子供が1人で旅する話だよ」

と、トーマ様が、本の表紙をこっちに見せてくれた。



表紙には、男の子が、荷物を背負って歩いてる絵が、かかれてある。

「そうなんですか」


トーマ様が読む本だから、もっと堅苦しい政治の本かなと思ったけど、意外にそういう本も読むんだ。


トーマ様の、新しい一面を見た気がして、うれしくなった。




あ、そうだ。

トーマ様が、何か私に用事があったんだよね?

それを聞きに来たんだった。

「トーマ様、先程のご用は何でしたか?」

私が尋ねると、


「ああ、そうだった。実は庭でランチの件なんだが…」


もしかして、無しになったとか?

私は不安になった。
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