■王とメイドの切ない恋物語■
「でもリリア、何で明日、王と2人きりでランチなわけ?」

と、エリックが聞いてくる。

「なんか、トーマ様、気分転換に外でランチしたいんだって。で、いつものシェフの料理じゃ気分変わらないからってことで、私がお弁当作ることになったんだー。お弁当だったらお世話係、私だけでいいしね」


「そうなんだな、いいなー。俺も弁当食べたいなー」

エリックが、遠くを見つめる。

「エリック、いつもお母さんの、お弁当食べてるでしょ」

と、私が突っ込んだ。


「俺も気分変えて、リリアの手作り弁当食べたいよ」

おどけたように言うエリックが可愛い。

「また今度作ってあげるってば」

私も笑いながら返す。



「絶対約束なっ」

エリックはうれしそうに指切りをした。


「了解いたしました」

私も敬礼する。

2人の間に、穏やかな空気が流れた。

庭に、2人の笑い声が響く。




私は、ふと思い出し、

「あ、そうだ。エリックこの前、私に花束くれたよね?」

「あぁ」

エリックが、頷く。


「あの花言葉ってなに?チチリさんが知らないの~?って私をからかってくるんだ」

エリックは私を見て、


「あ、やっぱり、リリア知らなかった?」

「うん」

私は、うなづく。

「ちょっと待ってて」

エリックは、そっとベンチを立ち、どこかへ行った。

3分くらいして、戻ってきたエリックの手の中には、あの時の花が1輪だけ、握られていた。

エリックは、その花を私に渡した。

「そうそう、この花だったよね」

私は花を見つめる。

うすいピンクで、花びらがフワフワしてて、本当に可愛い。

甘い香りもしてくる。

ふと、エリックを見ると、エリックも私を見つめていた。

「ん?」

私は、エリックを、じっと見つめた。


「花言葉は…」

「花言葉は?」

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