■王とメイドの切ない恋物語■
掃除なら、まかせて。得意だもの。


きれいな模様のカーペットを掃除し、窓際に置いてあった細かい細工のある陶器の置物を掃除していると・・


「王、午後の予定ですが・・・」

向こうからトーマ様と付き人が、歩いてくるのが見えた。


城の人が横を通るときは、仕事の手を止めて礼をするというのを、マーヤさんに習ったばかりである。


私は手を止め、頭を下げた。そのまま、足音が近づいて、通り過ぎるのを待っていたら、トーマ様の声が聞こえて来た。

「少し用事があるから、先に行ってくれ」
「はい、かしこまりました」

付き人は、先に去っていったようだ。


私は頭を下げたまま、トーマ様が通り過ぎるのを待った。

「顔を上げなさい、リリア」


そう言われ、ふと顔を上げると、昨日と同じように、優しく微笑んだトーマ様がいた。


あれ?笑っている?

さっき、トーマ様が厳しそうな感じだったのは、気のせいだったのかな?

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