■王とメイドの切ない恋物語■
時間も、ちょうど三時になり、おやつにする事にした。

「すぐ準備するので、少しお待ちくださいね」

「あぁ」

私は、手早くお茶の準備をした。

保温容器に入れてきたお湯で用意したので、温度が不安だったが、大丈夫そうだ。


「トーマ様、紅茶が入りました」

「ありがとう」

木陰で、二人でパウンドケーキをつまむ。

本当に夢見たい。

「これも、おいしいな」

「ありがとうございます!」


トーマ様は、ありがとうや、おいしいって言葉を、きちんと伝えてくれる。

これって、とても素敵なことだよね。

言われたほうは、本当に嬉しくなるもの。





「リリア」

「はい」

「8月の夏休みは、どうする予定だ?」

え?

「夏休み、あるんですか?」

初耳だ。


「そうだ。3日だけだが、皆、交替で夏休みをとってもいいことにしてあるんだ。いつも皆がんばっているから、息抜きも必要だろう」



優しい。

ちゃんと、みんなのこと考えてくれてる。

使用人だから、働いて当たり前って王様もいるだろうに。

「夏休みがあること知らなかったので、何も考えていなかったです」


トーマ様は笑って、

「そうか、楽しい夏休みになるといいな」
「はいっ」

私は返事をしながら、休みはうれしいけど、トーマ様に会えなくなるのはさみしいなと、ちょっと思ったのであった。

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