■王とメイドの切ない恋物語■
・・・・・。


「え?ええーっ!そんなのありえないよ」

チチリさんは、自信満々だ。

「いーや、あり得る。だいたい、ただのメイドに、こんな高価なプレゼントする?舞踏会の後、屋上でも抱き締められたんでしょ?」

「うん…」

「トーマ様、誰にでも、こんなことする人じゃないもの。絶対、リリアのこと好きなんだよ」

でもでも

「でも、昔から好きな人がいるって…」

チチリさんは考え込む。

「そこなのよね、ひっかかるのは。リリア来たの今年の4月だしね。実は、どこかで会ってるんじゃないの?」



私は、しばらく考えて、

「昔から知ってる男の子ならいるけど…」

と、つぶやいた。



チチリさんは目を輝かせ、

「それよ、それ!その子がトーマ様なのよ」

と自信満々に言い切った。



「でもね、チチリさん。その子の名前、マー・オーラルって言うの。トーマ・ガーランドと全然違う名前だし。住所も私の家の隣町だし。だから絶対違うと思う」



チチリさんは、考え込んで、

「マー・オーラル?なんか聞いたことある名前ね」

「まーくんのこと、知ってるんですか!?」

意外な展開に、私は乗り出した。

< 179 / 396 >

この作品をシェア

pagetop