■王とメイドの切ない恋物語■
チチリさんも、エリックに向かって、ヒラヒラと手を振っている。

私も、それに合わせて、手を振った。



チチリさんは、遠ざかっていったエリックを見つめたまま、

「リリア、何かあった?」

と、つぶやいた。


「…ん」

私は、うつむいた。


チチリさんは、全てが解っているようだった。

「仕方ないよ。エリックだって、リリアの気持ちわかってて告白したんだしさ」

やっぱり、さっきの私たちの態度で、何があったか、わかったんだね。


「うん、でも…」

私の頬を、一粒の涙が伝う。


「大丈夫。エリックの為にも、リリアが幸せにならなきゃ。あいつ…、俺の幸せは、好きな人が幸せになることだって言ってたもの」



前に、私にも、そう言ってたっけ…


その時のエリックの気持ちを考えたら、切なくて、やりきれない。

ごめんね、エリック。

私、知らない間にエリックを、たくさん傷つけてたかもしれない。

もう一筋、涙が流れる。

< 192 / 396 >

この作品をシェア

pagetop