■王とメイドの切ない恋物語■
「わたしはまだ幼く、父が亡くなった悲しみと不安で、泣いてばかりいた」


トーマ様は、遠くを見つめた。

本当に、辛かったんだね。

まだ6歳で父親が亡くなり、命まで狙われるなんて。


トーマ様は続けた。

「そして何もかも嫌になって、マーヤの家を飛び出したんだ。その時、出会ったのがリリアだった」



トーマ様は、私を見つめる。

あの時の小さな男の子の面影と、トーマ様が重なる。

トーマ様…

「リリアがいなかったら、今のわたしは、いないかもしれない。あの時、わたしはリリアに救われたんだ。その優しい笑顔に」


トーマ様が、私の頭を優しくなでる。

私があの時、まーくんに、してあげたように。


トクン、トクン。

私の心が、温かく満たされていく。


トーマ様が、まーくんだったなんて。

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