■王とメイドの切ない恋物語■
「何ーっ!?まーくんがトーマ様!?何でそんな面白い事、すぐに教えてくれなかったのさー。シクシク」

チチリさんは、お得意の泣き真似をしている。

「ごめんね、なかなか言い出しにくくって」

私は、近くの椅子に座った。

「やっぱり私の言った通りだったじゃない。トーマ様は、リリアのこと好きだったんだね。リリア、良かったね。おめでとう」

チチリさんが、抱き締めてくれた。

「ありがとーっ」

私は、ちょっと涙が出そうになった。

チチリさん、いつも相談にのってくれて、応援してくれてたもんね。

本当にありがとう。



「それにしても、最後のジュリアの話、気になるわね」

私は机にうつぶせた。


「ですよね。何もないといいんですが…」

チチリさんは、しばらく考え込んでいたが、私の方を見て

「まぁ、なんかあったらいつでも相談のるからさ」

と、ガッツポーズしてくれた。

えーん、チチリさんありがとう。

すごい心強いよ。

チチリさんが、味方なら、怖いものなんてないよ。

「チチリさん、頼りにしてます」

「ハイハイ、じゃあまたね。約束どおり、リリアとトーマ様のことは、皆には内緒にしておくわね。リリア、顔に出やすいから気を付けなさいよ」

はい、おっしゃる通りでございます。

「はーい、気を付けます。では、おやすみなさい」

「はい、おやすみーっ」

私は、チチリさんの部屋を後にした。

廊下を歩きながら、考える。

そうだよね。

みんなが内緒にしててくれても、私が態度に出しちゃダメだもんね。

意味ないもんね。

トーマ様にも心配かけちゃうし。

うん、がんばるぞ。

がんばれ、私。

私は気合いを入れるため顔をパチンと1回叩き、部屋に戻っていった。


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