■王とメイドの切ない恋物語■
「懐かしいなー」

トーマ様は、丘の上の広場をゆっくり見渡した。

「そうだよね。ここで、2人で遊んだんだもんね」

私も懐かしい思いで一杯だ。

あれから、2人は友達になったんだよね。



しばらくトーマ様と、遊具を見て回った。


あれから随分経ったのに、2人とも当時のことをよく覚えていた。

あの時のことを話していると、懐かしさが込み上げてくる。

あの頃は、2人が、こんなことになるなんて、想像もしてなかったよね。




あの時、2人が見た夕焼けを見ようということになって、2人で丘で、ゆっくりすることにした。

11月だから、日が落ちるのも早い。

あと1時間もしたら、夕暮れだろう。




「トーマ様、あの時も2人で、ここに座ったよね」

私はトーマ様と、村を見下ろせる高台に座った。

「そうだな。すごく懐かしいな。あの時は、本当に帰りたくなかったよ」

私は、トーマ様を見あげた。

「自分じゃ気が付いてなかったけど、きっと、あの時すでに、リリアのことが、好きになりかけてたんだろうな」

トーマ様は笑った。

「そうだったんだ」


あ、そういえば…。

聞いてもいいかな?



「トーマ様、いつから私のこと好きだって意識しはじめたの?」

トーマ様は、ゴロンと横になり、私のひざに頭を乗せた。

ひざまくらだ。

照れるよ。

嬉しいけどね。

えへへ。


「リリアへの思いを、俺に語らせたら長くなるぞーっ?」

トーマ様は、ニヤニヤする。

「あはは いくらでも聞きますよ」

私たちは、誰もいない村の丘で、ゆっくり語り合った。



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