■王とメイドの切ない恋物語■
「遅くなっちゃったね」

私は、時計を見た。

もう21時近い。

「ああ。でも、大丈夫」

ん?

「今日は、遅くなるかもしれないと思って、リリアの外泊届け、マーヤに渡しといた。もし帰れなかったら、どこかに泊まればいいと思ってさ」


トーマ様は、照れたように、私を見た。

「そっか。ありがとね」

トーマ様、色々準備してくれてたんだね。

指輪や、手袋や、外泊届けまで・・・

あはっ




「リリア達、今日は、どこに泊まるの?」

お母さんが、お菓子のお皿を片付けながら、聞いてきた。


私が、ちらっとトーマ様を見ると、

「まだ、どこにするか決めてないんです」

トーマ様が、お母さんに答えてくれた。

「なぁ、母さん。うちに泊まってもらえばどうだ?」

お父さんが、お母さんを見て言った。

「そうね。リリア達さえかまわなければ、ぼろ家だけど、泊まっていく?」


「どうする?トーマ様」

トーマ様は、少し考えて、

「ご迷惑じゃなければ、お言葉に甘えていいですか?」




「なーに、言ってんの。リリアの旦那さんになるんでしょ?息子も同然よ。全然迷惑じゃないわ。じゃあ、狭いけど、リリアの部屋に泊まってね」

お母さんは、そう言うと、トーマ様の肩をパシパシ叩いて、私の部屋に準備しに向かった。


「ごめんね。お母さん、遠慮ゼロで」

私が苦笑いすると、

「息子って思ってもらえるなんて、すごく嬉しいよ。いいなー、リリアの家族」

そう言って、トーマ様は、幸せそうに、まわりを見渡した。


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