■王とメイドの切ない恋物語■
前から気になってたことがある。

こういう感じで二人で寝てても、トーマ様は絶対に、私に手を出さない。

どうしてなんだろう?

私に女としての魅力が、無いから?

それだったら、悲しいよ。


「あのさ…、トーマ様って、そういう気分にはならないの…かな?」

私はドキドキしながら、遠慮がちに聞いてみた。

「そういうって、こういう?」

トーマ様の手が、私の胸に当たる。

一気に緊張する。

えっ?えっ?

トーマ様は、フッと笑う。

「そりゃー、なるよ。今だって、実は、すごい我慢してる」

そう言いながら、手を元の位置に戻す。



ふうー。びっくりした。

トーマ様は、私を見つめ、

「リリアを、大切にしたいんだ。だから、まだ手は出さない。リリアのこと、本気で愛してるから」

トーマ様…

私の為に、我慢してくれてるんだ。

ありがとう、トーマ様。



私は感謝の意味で、勇気を出してキスをしてみた。

「ちゅっ」

唇は届かなかったので、あごにしてみた。

「リリア。リリアからしてくれるなんて、すごいうれしいよ。でも…何で、あごなんだよー」

トーマ様は、笑いながらも、ちょっと残念そうだ。

「だって届かなかったんだもん」

私が、そう言うと、

「そうか。じゃあ…」

私の方に顔を寄せ、目を閉じた。

えっ?

「いや、あの、そのっ」

「早く早く」

私は、真っ赤になる。


「恥ずかしいよーっ 勢いないと無理っ」

「ちっ、残念。じゃあ、また今度絶対な」

トーマ様は、笑いながら、私の額にキスをした。

「あはは。わかったよ」


そんなことをしながら、誕生日の夜は、更けていった。
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