■王とメイドの切ない恋物語■
トーマ様が扉をあけると、ひんやりとした風が入ってきた。


「これを」

トーマ様が、自分の上着を差し出してくれた。


・・・え?


「そんな、申し訳ないです。私は大丈夫ですので」

そう言って断ると、トーマ様は、そっと上着を私の肩にかけ、


「いいんだ、遠慮するな」

優しい瞳が、こっちを見ている。


「・・・はい、ありがとうございます」


私は、真っ赤になった顔を隠そうと、うつむいた。


鼓動が高鳴る。


「さあ、こっちへ」


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