■王とメイドの切ない恋物語■
そこには、軽く腕組みした、トーマ様が立っていた。
「もっ 申し訳ございません」

私があわてて立とうとすると、トーマ様は笑って、

「いいよ、そのままで。リリアには、この前付き合ってもらった借りもあるしな。いい眺めだろう?いつでも自由に座っていいから」


私は、トーマ様に会えたうれしさと、私を気遣ってくれた優しさに感動して、

「ありがとうございます」

と、頭を下げるのが精一杯だった。

トーマ様は、向かいあわせの椅子に座り、私の方をその綺麗な瞳で見つめた。

私は、恥ずかしくなって、視線を遠くに向けた。

「リリア、今日は私服なんだな、休みか?」

「はい。今日から3日間お休みをいただいております」

「そうか、どこかに行く予定なのか?」

「はい、この後、馬車に乗って実家に帰り、3日目の昼に、こちらに戻る予定です」

ドキドキドキ…私、トーマ様と会話してるよ。

チチリさんなんて、3年いで1、2回しか話したことない、しかも用事ある時しか話したことないっていってたのに、私、普通に世間話しちゃってるよ。


いいんだろうか?

私が、そんなことを考えていると、


「そうか、2日半もいないのか、寂しくなるな。気を付けて行ってきなさい」

「はい…」


はいーっ?今、なんと?


寂しくなるって言ってくれたよね?

社交辞令かもしれないけれど、めちゃくちゃうれしいよ。

泣きたいくらい、うれしいよ。このまま、時が止まればいいのに。

好きな人との時間は、どうしてこんなに早く過ぎ去るのだろう。


その後も、何気ない会話をして、あっという間に時間が過ぎ去り、馬車の時間が差し迫った。



名残惜しかったが、私はトーマ様に、さよならを言い、お城を出て馬車に乗りこんだ。


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