■王とメイドの切ない恋物語■
ドアに手を伸ばし、ノックした。

「はい」

いたーっ。トーマ様いたーっ。

「リリアです。クッキーをお持ちしました」
「どうぞ」

どうぞってことは、中に入るんだよね?

どうしよう。

てっきりドアの前で、クッキーを渡すだけだと思っていた私は、かなり緊張した。

そうだよね、トーマ様にわざわざ出てきてもらうなんて失礼だものね。

「しっ、失礼します」


私はガチガチに緊張しながら、ドアを開けて中に進んだ。



…うわぁー、広いな。

やっぱり王の部屋だけあって、広くて、立派なソファーセットや、暖炉、重厚感のある机や、本棚などがある。


トーマ様が、こっちに近づいてきた。


「リリア、待たせて悪かった」

「いえ、大丈夫です。あの、これがクッキーです。トーマ様のお口に合うといいんですが」


私は、クッキーの入った包みを渡した。

「ありがとう。そこにかけなさい」


トーマ様は、ソファーを指差している。

えぇーっ。まだ私、ここにいていいの?

うれしいけど、緊張するよ。私は、平静を装って、お辞儀した。



「はい、失礼します」

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