■王とメイドの切ない恋物語■
「すみません、これから少し用事があるので」


トーマ様は、そう言うと、一礼して2階に姿を消した。


よかった。ほっと一息


・・・のはずなんだけど

トーマ様が姿を消したとたん、エリザベス姫は態度や表情がガラリと変わる。

ここに来て3日。いつもそうだ。




「ちょっとそこのあなた、喉が乾いたわ。飲み物を持ってきなさい」

メイドの1人が、あわてて取りにいった。


「そこのメイド、暑いから、あおいでちょうだい」


指差されたチチリさんは、ちょっと、むっとした顔をして、扇をとりにいった。

「そこのあなた…」


私のことだ。

みんな用事を言いつけられ、もう私しかメイドがその場にいない。

「はい、何でしょうか?」


「肩をマッサージしてくれるかしら」


「はい、かしこまりました」

くぅーー

エリザベス姫、トーマ様がいない時は、全然態度違うよ。。。

さっきまで可愛い女の子だったのに…



エリザベス姫が、急に振り向き、にらんできた。

私の顔がこわばるのがわかった。

「調子にのらないでくださる?」

・・え?

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