■王とメイドの切ない恋物語■
「リリア、好きな色はあるか?」

え?

想像もしていなかった質問に、一瞬混乱してしまった。


「色…ですか?」

「そうだ」

トーマ様は、私をやさしく見つめている。



私は少し考えて

「薄いピンクが好きです。かわいいなーと思って」

「そうか、薄いピンクか・・・」

トーマ様は考え込んでいるみたいだった。


「どうしたんですか?」


私がそう聞くと、トーマ様は、顔をあげて笑った。

「あ、いや。プレゼントを考えていてな、どんな色がいいか悩んでいたんだよ。マーヤに聞いてもよかったんだが、ちょっと若い子と趣味が違うかもしれないからな」


「そうだったんですか」

若い子へのプレゼントを考えてたんだ。

今、トーマ様がプレゼントを送りそうな子は、一人しか思いつかない。

たぶん、エリザベス姫だ。

私は急に辛くなった。

トーマ様が部屋に入ってきた、さっきまでのドキドキや、うれしさは消えていった。

やっぱりトーマ様も、エリザベス姫にひかれてるんだわ…

まずい…涙出そう…

私は、ぐっと涙をこらえ、笑顔を作った。

「トーマ様の・・・、お役にたてて、よかったです」


トーマ様は、不思議そうに少し首をかしげた。

「うん、ありがとう、リリア。じゃあ、お邪魔したね」」

と、ドアノブに手をかけた。

私は、ひきとめたかった。

少しでもトーマ様のそばにいたい

でも、それはできなかった。

トーマ様が、そばにいたいのは私じゃないわ…

トーマ様に、伸ばしかけた手をとめ


「おやすみなさい」

そう言うのが、精一杯だった

「おやすみ、リリア」

トーマ様は微笑み、ドアを閉めて帰っていった。

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