【短】太陽のため息
カラン


慣れた手つきでドアを開け、店主に小さく頭を下げてから、いつもの席に収まる。

窓際の小洒落たスペース。
アンティークの小物で飾られた、なんとなく心が和やかになれる場所。


「ご注文は、何時ものものでよろしいですか?」


少ししゃがれた声の初老の店主は、にこやかに冷たい水と熱いおしぼりを持ってやって来た。


「あ、はい。お願いします」


その熱いおしぼりで手を拭きながら、彼女の顔を思い浮かべた。


可愛らしくて、大人しそうで…それでいて芯の強そうな…子。

男に免疫がないのは、今朝のナンパの一部始終からして分かったけれど、あれだけの可愛さならば、一度は一緒にいたいと思うのではないだろうか…?


「なんか、調子狂うな…。これじゃまるで……」



と、その後の言葉は、目の前に入り込んできた映像に反応して、紡がれることはなかった。


< 13 / 21 >

この作品をシェア

pagetop