【短】太陽のため息
その子は、モデルのような白く小さな顔をしていて、身長もスラリとしていて…それなのにとても『和』を感じさせるような子だった。



困っている。


それは明白。


何故それが分かったかというと妙に浮世離れした…この場所に明らかにそぐわない輩が、彼女に執拗に声掛けをしていたから。


「ねぇねぇ?いいじゃん、これから俺と遊ぼ?」


ありきたりな、誘い文句がなんとなく癪に障る。

まだ、通学時間だろうに、その見るからに軽そうな男は、そんなこと知ったことかと言わんばかりに、彼女へと近寄っていく。



誰も、助けない。


誰もが、横目でチラリと掠めるだけで通り過ぎてしまう。


「あの…私、学校が……」


怯え切った小さな小さな声。
それでも、凛としているように思えたのは、彼女の瞳がとても澄んでいたからかもしれない。


「いーじゃん、いーじゃん。今日くらい。学校ばっかじゃつまんないっしょ?だからさぁ…」


そう言うと、さもそれが当たり前の動作かのように、その男は彼女の手を掴もうとした。


「いや…っ。や、めてくださっ」

「あのさぁ?あんたS校のコなんだろ?お嬢様だかなんだかしらねーけど、お高く止まってんなよ?」


精一杯の抵抗に苛立ってしまったのか、男は彼女の顔に自分の顔を寄せて、意地悪そうにそう吐き捨てる。


俺はそこまで眺めていて、ハッとした。



このままじゃ、いけない。


このままじゃ…。



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