【短】太陽のため息
「おい。何してる?」
気付いたら…そう言って、二人の間に割って入っていた。
自分でもどうしてそんなことをしたのか、分からない。
それでも、あのまま自分まで通り過ぎてしまったら、絶対に良くないことが起こりそうで…。
どうせ、空気なら…切り付けられても傷付かない。
それくらいの思いだったのかもしれない。
「あぁ?あんた、なんなんだよ?俺このコと仲良くお話してるだけなんだけどー?」
「おれ…いや、私はその子の学校の教師だ。分かったらさっさといなくなれ。なんなら不審者として交番に届けるか?すぐそこにあるぞ?」
自分でも信じられなかった。
こんな性根が自身の中にあったことに。
かなり驚きを隠せなかったけれど、そんなことに動揺している暇はなかった。
ひるまない内に、相手を撃退すべく、俺は交番の方を見ると大声を出す"フリ"をした。
「わ、わかった!わかったよ!くそっ。先公とか超うぜぇ!覚えてろよ!」
これまた呆れるくらいにありきたりな捨て台詞に、俺は肩をすくめるとすっかり怯えてしまっている彼女の方を見た。
「大丈夫?」
「っ、あ、ありがとう、ございました…」
「いいよ。気にしないで。それより始業時間近いでしょ?早く行くといいよ。今度は悪い奴に捕まらないようにね」
「はい、あの…なんてお礼をしたらいいか…」
「ははっ。ほんとに気にしないで?じゃあ、俺はもう行くから…っと、もしかしたらさっきの奴がまだウロウロしてるかもしれないから、バス停まで送るよ。さぁ、一緒に行こうか」
出来るだけ、怖がらせないように。
異性というものに対して恐怖感を与えないように、慎重に言葉を選んでにっこりと、微笑んだ。