【短】太陽のため息
俺は、彼女に向けて何かを語らおうとして押し黙る。
こんな時に気の利いた会話の一つでも出来たら、もっとスマートに生きられるのに…。
そんなふうに思って、軽く自分の不甲斐なさに舌打ちをしそうになった。
呪いたい自分の体質。
これしきのことで、うじうじと悩んでいたら、いつまで経っても成長なんか出来ない。
そんなことを思いながら、隣を歩く彼女の歩幅に合わせて、こつんこつんと熱気に包まれたアスファルトを掻き鳴らしていると、不意に彼女が小さい声で、それでもハッキリと俺に向けて話し掛けてきた。
「あの…っ。差し支えなければお名前を伺ってもいいでしょうか…」
「え…?」
二人の間に流れる一瞬の沈黙。
彼女は、ふんわりと微笑むと、もう一度言う。
「お名前、教えてください」
と。