【短】太陽のため息
「改めまして、よろしく。…えっと、俺もキミの名前知らなかったね。なんだか…ナンパしてる気分だけど…キミの名前、聞いてもいい…かな?」
俺は流れてくる汗を手の甲でぐいっと拭ってから、そう尋ねた。
「橋下彩里っていいます。さえりは、彩の里と書いて、さえりです」
「彩里さん、ね。…じゃあ、また会おう」
いつか…。
と心に留める。
それだけで十分だ。
心の中でざらざらと不安定な音がするような気がした。
まさか、自分が年下のしかも学生と釣り合うとは思えない。
こんな地味な俺と、瑞々しいまでに凛とした彼女では、まさに水と油。
相反し過ぎてる。
一つ、また溜息を吐いて、俺は会社へと歩みを早めた。