記憶の糸。
そう考えてたら、涙が溢れて止まらない。だけど、声を上げて泣く訳にもいかない。

私は布団を被って、泣くことしか出来なかった。



「……」

私が訳の分からない状態になってから、もうすぐで1日が経とうとしてる。

あの後、泣き疲れたみたいで寝ちゃったけど、元に戻ることは出来なかった。

「春枝」

名前を呼ばれて振り返ると、義也様が心配そうな顔で私を見てる。

「義也様……?」

襖を閉めながら部屋に入って来た義也様は、畳の上に座った。

「……話せ。お主、春枝ではなかろう?」

「……っ!?」

突然の義也様の言葉に、私は驚くことしか出来ない。

「……そんな驚いた顔をするな。私は、春枝には言ってないが、陰陽師でもある。それくらい、分かる……」

そう言って、義也様は微笑んだ。……すごい……。

「……そうです。私は、春枝ではありません」

「やはりな。じゃあ、お主は誰だ?どこから来た?」

「私にも分かりません。昨日、気が付いたらこうなってて……私は、弥生(やよい)と言います」

「……そうか……お主は、恐らく春枝に憑依したんだと思うぞ。春枝のこと、自然と分かっただろ?」

「え……?」
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