とりあえず、溺れとく
「どうして?」
「ママがよく、うさぎをつくってくれていたから」
「リンゴのうさぎは、赤のイメージが強いかも」
確かに、と。ハルキくんはうなずいた。
「ちょっと待っててね」
彼は立ち上がり、キッチンへと向かう。
わたしは、ただ、彼のコップをみつめるだけ。
透明なガラス、透明な水、透明な汗をかいた表面。
ハルキくんは、水しか飲まない。
お茶とか、ジュースとか、スムージーとか、プロテイン。
家に置いてあるところすら、見たことがない。