小悪魔王子に見つかりました
あの羽芽ちゃんなら、寧衣くんのことを叩き起すこともできたはずだけど、
そうしなかったのは、私が今どうしたいのかわかってくれたんだろう。
まさか、自分がここまで自分から踏み込む人間になるなんて。
少し前は考えてもみなかった。
心の中でもう一度羽芽ちゃんにお礼を言ってから、視線を後ろの席の彼に向ける。
サラサラの色素の薄い柔らかそうな髪。
お日様の匂いがしそうだ、なんて思う。
ちょっと嗅いでみたいかも……。
『浅海さんって、匂いフェチ?』
って!!
BBQの朝、尾崎くんに言われたことを思い出す。
今の私、絶対変態みたいだったよね。
嗅いでみたいって……!
匂い、フェチ、なのかな……。
いや、私のフェチなんて今はどうでもよくて。
早く寧衣くんを起こさなきゃ。
今までずっと、成績優秀で、遅刻なんて絶対しなかったような彼だ。こんなんで遅刻なんてもったいないよ。
それとも、具合が悪いのかな?
羽芽ちゃんは不貞腐れてるだけ、って言っていたけれど。それがどういう意味なのかもわからない。