小悪魔王子に見つかりました
「ね、寧衣くん、」
こんな風に自分から寧衣くんの名前を呼んだのが久しぶりな気がして緊張する。
今この教室には、私と寧衣くんのふたりきり。
急にそれを実感して、緊張とは別に、ドキドキと鼓動が速くなる。
「次の授業、遅刻しちゃうよ」
「……」
起きない……。
相当疲れているんだろうか。
声をかけて起きないのなら、肩を揺すったり少し身体を動かした方がいいのかな。
ジーッと、寧衣くんの髪を見つめる。
「……寧衣くん、」
「……」
名前を呼びながら、自然と自分の手が伸びる。
ただ、触れて、起こしてみるだけ。
寧衣くんが起きないのがいけないから。
コクン、と小さく喉が鳴る。
「寧衣くん、起きて……」
『まだ起きないで』
心の中は正反対のことを思いながらさらに伸ばした手は、わずかに寧衣くんの髪に触れた。
「……わっ、ふわふわ───」
「──なんで?」
へ。