小悪魔王子に見つかりました
『なんで』
はこっちのセリフだ。
思わず漏れてしまった私の声は、その掠れ声にかき消されてしまった。
同時に、はちみつ色の髪に触れていた私の手は、ガシッと目の前の彼の手によって掴まれていて。
声の主は、顔を下にしたまま。
嘘でしょ。
一気に冷や汗が止まらなくなって、動けなくなってしまう。
口元も震えてうまく言葉が出てこない。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
……最悪、だ。
これは完全に、嫌われた───。
「……あっ、えっと、これは、」
なんて言い訳をするんだ私。
どんなに脳をフル回転させようとしてもパニックで全然何も出てこない。
起こすために触れたとしても『ふわふわ』なんて感想、絶対口に出しちゃいけなかったよ!
聞かれていたのかも。
いや、そうに決まってる。
だから、目の前の寧衣くんは、今まで見たことないぐらい不機嫌そうな声をしているんだ。