小悪魔王子に見つかりました
「……浅海さんって、俺のこと───」
「……寧衣」
「っ?!」
突然聞こえた男の人の声に驚いて、とっさに声のしたドア付近に目を向けると、
「き、木野くん?!」
「木野……」
そこには、クラスメイトの木野くんが立っていた。
一体、どうしたんだろうか。
「木野くん、どうしたの」
「こっちのセリフだよ。浅海さん、俺とリレーのペアだよね?いないと練習にならないんだけど」
いつもの表情ひとつ変えないクールな雰囲気と、淡々とした喋り方。
怒っている、わけでは無さそうだけど、ちょっぴり怖いかも。
「はっ!!あ、え、えっと、す、すみませんっっ!!」
「木野、違うんだ。俺が浅海さんを引き止めたせいで───」
「知ってる」
「えっ?」
木野くんの『知ってる』という返しに頭ははてなマークでいっぱいになる。
しかも、寧衣くんが私を引き止めたわけじゃないのに。
私が勝手に、寧衣くんのそばにいたくてしたことなのに。