小悪魔王子に見つかりました
「足はほんとうに全然平気。ただ申し訳なくて。寧衣くんたちがせっかくトップに持っていってくれたのに。
木野くんも弟くんのために頑張って優勝目指してたのに。絶対呆れられちゃった」
太ももの上で両手をぎゅっと握って震えそうな声で言う浅海さん。
そんな彼女の肩に優しく触れる。
「木野はそんなことで怒ったり呆れたりするやつじゃないよ。浅海さんも本当はわかってるでしょ。木野、ずっと浅海さんのこと心配そうに見ていたし、絶対、逆に申し訳ないって思ってる」
「…そんな、木野くんは何も」
「外から見てるだけだったけど、木野のスピード、練習の時より少し速かったよ」
「えっ……」
本番、気持ちが高揚して普段よりも勢いが出ちゃうことは、なんとなく理解できるから。
彼を責める気持ちは一切ないけれど。
そんなことよりも。