小悪魔王子に見つかりました

「うるさいよ昴」

「えなに怒ったの?ごめん。だってお前……」

「行こ、浅海さん」

「え」

今まで聞いた声よりもわずかに低い声が私の名前を呼んで。

手首を掴まれた。

「あ、ちょっ、まだ話の途中じゃ、」

「あいつと話すことなんてないよ」

「……っ、」

どうしよう。
尾崎くん何か言いかけていたのに。

でも、今の寧衣くんは昨日今日と私が見てきた彼とは違う雰囲気を纏っていて。

だからこれ以上なにかを言ってはいけない気がして。

「あ、ちょ、寧衣!」

尾崎くんがそう呼んだのに、彼はそれを無視して。

あまりにも寧衣くんらしくない、と思った。

多分それは、クラスのみんなも思ったに違いなくて。

「ああなると手に負えないからなあいつ」

なんて尾崎くんの声はもちろん私には聞こえず。

クラス中に注目されながら、私は寧衣くんに引かれるまま、一緒に教室を後にした。
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