小悪魔王子に見つかりました
「よし!!俺も友達が呼んでるからちょっと行くわ。じゃ、浅海、あとで!!」
「う、うん、」
手を上げた酒井くんが、その場を後にした。
酒井くんがいなくなって辺りが一気にシンとする。
「っ、寧衣くん、あのっ、」
何か言わなきゃ。
謝らなきゃ。
私のせいで気分が悪くなっていたのかもしれないことも、
放課後話すはずだったのにできなくなってしまったことも。
そう思って声を出したのに。
「よかったね」
私の声を遮るようにそう言った寧衣くんが、こっちを見ないまま、
「早く行かないと本当にご飯食べる時間なくなっちゃうよ」
と背中を向けて私の前を歩き出した。
『よかったね』
寧衣くんが純粋にそう言える人なのはわかってるはずなのに。
なんでこんなに苦しいんだろうか。
そもそも、寧衣くんは私とはもう話したくなくなっていたのかも。
考えれば考えるほど、寧衣くんに呆れられる理由が浮かんでくる。
あんな風に優しい言葉をたくさんかけてくれたけど、本当は、
迷惑だって心のどっかで思っていたんじゃないかって。
怪我しているのに走って、結局一位でゴールもできなかったまま、寧衣くんに担がれて。
すごいトラブルメーカーじゃん。