小悪魔王子に見つかりました



あれから、寧衣くんと一言も話せないまま、時間はどんどんすぎていって。

体育祭は無事に終わったけれど、寧衣くんのあのセリフが頭から離れなくて。

『よかったね』

羽芽ちゃんたちや木野くんが何度も私の怪我の様子を心配して声をかけてくれたのは覚えているけれど。

お昼あとからの体育祭の記憶があまりない。
全てのプログラムが終了した後の片付けも。

気が付けば、グラウンドの周りに張り巡らされていたテントや装飾が、綺麗になくなっていて。

あっという間に普段のグラウンドに戻っていた。

「あーーーつっかれた!帰ろうぜ!寧衣!」

背後から尾崎くんの声がして、チラッと振り向けば、

そこには尾崎くんと寧衣くん、木野くんの3人が集まって話していた。

明日は振り替え休日。

このまま寧衣くんと話せないまま過ごすのは嫌だと思って、

声をかけるタイミングを伺うけど。

なかなか目が合わない。

いつもなら、寧衣くんがすぐに私の視線に気がついて目を合わせてくれる。

それなのに今は、まるで意図的に目を合わせないようにしているんじゃ、と思ってしまう。
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