小悪魔王子に見つかりました
どうしよう……声かけられない。
聞きたいことたくさんあるのに。
あのとき、私の頬に唇を当てたのはなんだったのか。
寧衣くんは一体、何を言いかけたのか。
話したいのに、今寧衣くんに話しかけるのはなんだか怖くて。
私がそう悩んでいる間にも生徒たちは次々と帰っていく。
校舎の方ではきっと酒井くんが待っている。
……行かなきゃ、だよね。
約束したんだし。
「ね、姫茉!これからみんなでプリ撮りに行かない?」
みんなの輪からほんの少し一歩下がって、校舎の方へ振り返ろうとした瞬間、
羽芽ちゃんに声をかけられた。
「あっ、ごめん。私これから用が合って」
「え、あー!そーだったそーだった!こっちこそ気が回らなくてごめんっ!よし、じゃあうちら帰ってるね!火曜日、話聞くの楽しみにしているよ!」
羽芽ちゃんは私の肩を掴んで嬉しそうにそういう。
あれ……。
私、羽芽ちゃんに酒井くんの話したっけ。
そんな記憶は全然ない。
もしかして、ぼーっとしている間に無意識に話しちゃったのかな。
頭でぐるぐると考えている間に、なぜかニヤニヤしている羽芽ちゃんたちが、私に手を振って。
そそくさと先に帰ってしまった。