小悪魔王子に見つかりました

どうしよう……声かけられない。

聞きたいことたくさんあるのに。

あのとき、私の頬に唇を当てたのはなんだったのか。

寧衣くんは一体、何を言いかけたのか。

話したいのに、今寧衣くんに話しかけるのはなんだか怖くて。

私がそう悩んでいる間にも生徒たちは次々と帰っていく。

校舎の方ではきっと酒井くんが待っている。

……行かなきゃ、だよね。
約束したんだし。

「ね、姫茉!これからみんなでプリ撮りに行かない?」

みんなの輪からほんの少し一歩下がって、校舎の方へ振り返ろうとした瞬間、

羽芽ちゃんに声をかけられた。

「あっ、ごめん。私これから用が合って」

「え、あー!そーだったそーだった!こっちこそ気が回らなくてごめんっ!よし、じゃあうちら帰ってるね!火曜日、話聞くの楽しみにしているよ!」

羽芽ちゃんは私の肩を掴んで嬉しそうにそういう。

あれ……。
私、羽芽ちゃんに酒井くんの話したっけ。

そんな記憶は全然ない。

もしかして、ぼーっとしている間に無意識に話しちゃったのかな。

頭でぐるぐると考えている間に、なぜかニヤニヤしている羽芽ちゃんたちが、私に手を振って。

そそくさと先に帰ってしまった。
< 225 / 375 >

この作品をシェア

pagetop