小悪魔王子に見つかりました
ひとりで酒井くんに会うのはちょっぴり心細いけど。
待たせすぎるのはよくないし。
うん。
行こう。
こちらに背中を向けたまま友達と話す寧衣くんから視線を逸らして、
酒井くんの待つ場所へと向かった。
「遅くなってごめんなさいっ!」
「おっ!おつかれ」
ベンチに座ってスマホを触っていた酒井くんが、私に気付いて顔をあげた。
改めて、酒井くんの顔を見て。
当時、学年いち人気者だった男の子とふたりきりで話しているというのを実感して、トクトクと胸が鳴る。
やっぱりちょっと緊張しちゃうな。
「はい」
突然目の前に差し出されたのは、ペットボトルに入ったスポーツドリンク。
「えっ、」
もしかして、酒井くんが買ってくれたの?
私のために?
「体育祭終わってそのまま片付けって、相当疲れたでしょ」
「あ、ありがとう……」
まさか、ここまで親切にしてもらえるなんて。
「ここ、自販機の種類多くて羨ましい〜」
「そうかな?酒井くんの学校はそんなにないの?」
「うん。全然。だからいつも争奪戦すごくて。1日ですぐ売り切れるし。あ、でもアタリはよく出るかな」
「へぇー!アタリ!いいね!」
そんなたわいもない話をする。