小悪魔王子に見つかりました
酒井くんの部活の様子とか、中学の頃の共通の思い出話とか。
中学の話をされたとき、最初は、バクンと心臓が大きくなって冷や汗が出たけど。
酒井くんと話せば話すほど、楽しかった思い出が少しずつ蘇ってきて。
夏休みが始まるまでの期間、そういえばあのときはまだ、楽しかったっけ。
酒井くんともよく話していた。
夏休みも、グループの子たちと遊びに行ったりして。
変わってしまったのは、夏休みが明けて、私がトイレでみんながしてる陰口を聞いてしまったから。
もしあのとき、タイミングが少しでも違っていたら、今とは変わった中学生活だったのかな、なんて考えが一瞬だけよぎる。
いや、違う。
あれがあったから、私は今、羽芽ちゃんや寧衣くんたちと楽しく過ごせているんだ。
寧衣くん……。
ふと思い出して。
今日、唇が触れた頬に指を当てる。
隣には酒井くんがいるのに、頭の中は変わらず寧衣くんでいっぱいで。
我ながら重症だ。