小悪魔王子に見つかりました

自分の気持ちを伝えて、朱耶くんに気まずい思いをさせるのも、

今後、お店で買い物できなくなったりするのも嫌で。

それに、寧衣に頼ってばっかりなのもどうなのって思って。

寧衣には、自分でなんとかするからなにもしなくていいなんて言ったこともあった。

なにをどうするなんて全然考えてなかったくせに。

多分、片想いをなんだかんだ楽しんでいたんだと思う。

だから、今の唯一の癒しの時間がなくなってしまうのが怖くて。

私の遠くから見ているだけの恋は、中2に上がるまで続いた。

そんなある日のことだった。

1日曇り。

朝のニュースの天気予報では言っていたけれど、放課後学校を出る頃には、小雨が降っていて。

家に近づくたびに、それはだんだん大粒の雨に変わった。

慌てて、コンビニに入って、ビニール傘を買おうとしたら、

カバンの中に財布がなくて。

そういえば昨日、財布の中を整理整頓して片付けたあと机の上に置いたままだったんだ、と思い出して。

最悪だ……と心の中で呟いた。
< 317 / 375 >

この作品をシェア

pagetop