小悪魔王子に見つかりました
財布がないんじゃ、買い物ができないわけだし、そんな状態で雨が止むまで店内をうろうろしてるのも不審すぎるから、
店内を出て、雨宿りできそうなギリギリの軒下で、全然止まなそうな雨をぼーっと眺めて。
さて、どうしようか、と考えた瞬間だった。
『これ、よかったら使ってください』
突然、横から声がして見上げれば。
そこに立っていたのは、紛れもなく、コンビニ店員の最上朱耶くんで。
息を呑んだ。
雨にうたれて最悪、そう思っていたのに。
こんなの、一気に最高の日になっちゃうじゃん。
『あの、』
『雨ジッと見てたから、もしかしたら止むの待ってるのかなって』
『あっ、すみませんっ、お財布、家に忘れてきちゃって。傘買えなくて……。でもこれ、』
渡された傘は、明らかに売り物のビニール傘ではなくて。
ザーザーと降り続ける雨が、私のうるさい心臓の音をかき消してくれた。
『あ、ごめん、知らない人の使うの抵抗あるよね、どーしよっか……』
『はっ、いえっ、全然っ!!その、知らない人、じゃないですし、えっと、いいんでしょうか?』
私はあなたのことをずっと前から知っています、そんな気持ちを乗せて。