小悪魔王子に見つかりました
『いいよ、いいよ。使って』
そう言って、灰色の空を見上げた朱耶くんの横顔がすっごくカッコよくて。
やっぱり好きだなって思って。
初めてちゃんと会話というものをして、しかも朱耶くんの私物らしい傘まで借りてしまって。
雨、大感謝。
でも、私がこの傘を広げたら、この時間は終わってしまうんだろうと思うと、寂しくてしょうがなくて。
軒下から出るの、一瞬、ためらっていたら、
『この大雨だとお客さん全然来なくてさ』
朱耶くんの方から話しかけてくれた。
『はっ、ですよね、』
『ちょっと暇で』
それって私、朱耶くんの暇つぶしになってもいいってことなのかな?
急展開に、もう頭の中真っ白で。
『ここ、よく来てくれるよね。何年生?』
常連であることを知ってもらっていてさらに嬉しくなって。
『あっ、はいっ。2年、です』
『へー!そっか!じゃあうちの弟と同い年だっ!』
っ?!
まさか、朱耶くんの口から寧衣の話をされる日が来るなんて思ってもみなくて。
また大きく胸が鳴ってしまった。