小悪魔王子に見つかりました
木野くんが、「うーん」と樹くんへかける言葉を考えていると、
再び樹くんに声をかけたのは、酒井くんだった。
「樹くん、ケーキがなくなっても、みんなが帰っても、またすぐに会えるしたくさん遊べるよ。みんな樹くんのこととっても好きだから」
すっごく優しい声で寄り添うように。
「ほんと?」
「ほんとほんと!その恐竜だって、樹くんが描いてって言ってくれたらこれからいっぱい描くよ!」
羽芽ちゃんも涙目でそう言って。
「その恐竜、気に入ってくれた?」
樹くんの顔を伺いながら、羽芽ちゃんがそう聞けば、
樹くんが、コクンとしっかりうなづいて。
羽芽ちゃんはすごく嬉しそう。
「よーし!今度こそ食べるぞーー!」
尾崎くんの元気な声が響く。
「今度はクッキーなんかもいいな。バレンタインとかに。ね、姫茉!」
「うんっ」
羽芽ちゃんの提案に大きく頷いて。
「樹ばっかりずるい!俺も食べたい!」
「俺も!」
「翠も!」
尾崎くんに続いて、望くんと翠ちゃんも手を挙げた。
これからも、もっとたくさん、みんなと、素敵な思い出を作るんだ。
切り分けたケーキを、パクリと一口食べた樹くんが「美味しいっ」と今日一番の笑顔で言ってくれたから、
また胸がいっぱいになった。