小悪魔王子に見つかりました
「浅海さん困ってるじゃん。夫婦漫才なら外でやってよ」
「はぁー?誰がこんなやつと!寧衣のバカ!」
「め、おと?え、めおとってなに?」
尾崎くんにそう聞かれて「はぁ」と深いため息をつく井手上さん。
「ねぇねぇ浅海さん、めおとってなに?」
「へっ!?」
「いいよ浅海さん、相手しなくて。昴、自分で調べな」
「おけ。ちょっと辞書取ってくるわ」
そう言って辞書の置いてある教室の後ろのロッカーに向かって行った尾崎くん。
私の机の周りで行われている人気者たちのやり取りに、クラスメイトたちは大注目。
本人たちは自分たちがとても注目を浴びてしまっていることに気づいているんだろうか。
「ごめんね浅海さん。朝から騒がしくて」
「あ、全然っ」
というか、寧衣くんだけじゃなくて、井手上さんも尾崎くんも、
私と話しているのをクラスの人たちに見られていいのだろうか。
「浅海ちゃん!」
周りからの視線を気にしていると、井手上さんが机に両手を置いて前のめりで私を呼んだ。